小万こまん)” の例文
「明治四十三年十月二十日、黒羽くろばね万盛楼まんせいろう娼妓しょうぎ小万こまん、男と共に逃亡、この山奥に逃込みしはず、捜索のため云々うんぬん——」
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
吾々は今日の新橋しんばしに「ほり小万こまん」や「柳橋やなぎばし小悦こえつ」のやうな姿を見る事が出来ないとすれば、其れと同じやうに、二代目の左団次さだんじと六代目の菊五郎きくごらうに向つて
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なるほど、今日は朝から陰気臭い日和ひよりであった、関の小万こまん魂魄こんぱくが、いまだにこのにとどまって気圧を左右するのか知らん、「与作思えば照る日も曇る」の歌が、いんに響けば雨が降る。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白字はくじ小万こまんと書いた黒塗りの札を掛けてある室の前に吉里はあしを止めた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
田中なる小万こまんが柳おつる頃 荷兮かけい
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小万こまんは涙ながら写真と遺書かきおきとを持つたまゝ、同じ二階の吉里よしざとへやへ走ツて行ツて見ると、素より吉里のらう筈がなく、お熊を始め書記かきやくの男とほかに二人ばかり騒いでゐた。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
小万こまんは涙ながら写真と遺書かきおきとを持ったまま、同じ二階の吉里よしざとへやへ走ッて行ッて見ると、もとより吉里のおろうはずがなく、おくまを始め書記かきやくの男とほかに二人ばかり騒いでいた。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)