射抜いぬ)” の例文
旧字:射拔
おれの親方のった矢の根は、南蛮鉄なんばんてつでも射抜いぬいてしまうってんで、ほうぼうの大名だいみょうから何万ていう仕事がきているんだ。おれはそこの秘蔵ひぞう弟子だ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その枕はピストルのたまで射抜いぬかれ、血のりで汚れたからです。それが恐ろしい他殺の証拠になるからです。
妻に失恋した男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一人は石垣のそばに坐ったまま頭を射抜いぬかれていたこと、以来とかく遺憾千万な出来事が引き続いて起こったようなわけであるから、生命いのちが惜しいと思ったら
空気銃とて、照準を合わせる練習は立派にやれるし、プスリと射抜いぬいた刹那せつなの快感も相当なものである。
白銅貨の効用 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
次はぽんと音がして、黒い団子が、しょっと秋の空を射抜いぬくようにがると、それがおれの頭の上で、ぽかりと割れて、青いけむりかさの骨のように開いて、だらだらと空中に流れ込んだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(やけ気味に)いざとなればあのたねしまに、心臓を射抜いぬいて貰ひますから。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
都鳥の胸をも射抜いぬいたるは……
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まさしく五重塔ごじゅうのとうの、あやしき老人を射抜いぬいたとおもったのに、ぱッと、そこから飛びたったのは、一羽の白鷺しらさぎ、ヒラヒラと、青空にまいあがったが、やがて、日吉ひよしの森へかげをかくした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……あれは、前科者プロスクリとか森林山賊チュシナとかといういかめしい連中なのです。ぶっそうなことにはね、コルシカ人ってのは、みな鉄砲の名人です。十町も向うから暗夜に烏の眼玉を射抜いぬこうという腕前です。