対馬守つしまのかみ)” の例文
旧字:對馬守
対馬守つしまのかみは、咄嗟とっさにキッとなって居住いを直すと、書院のうちのすみから隅へ眼を放ちながら、静かにやみの中の気配をうかがった。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
耳朶みみたぶを紅くし、眼には、涙をすらたたえて、彼が、情熱をぶつけると、若年寄の加藤越中守も、稲葉対馬守つしまのかみも、じっと、打たれるように聞いていたが
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸へ着いた柳生対馬守つしまのかみ一行。麻布林念寺前りんねんじまえかみやしきで、出迎えた在府ざいふの家老田丸主水正たまるもんどのしょうを、ひと眼見た対馬守は
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
峠を登りつめると、松平対馬守つしまのかみ(四万六千石)の城下が見える。峠の下にある仲山という宿場が、ほぼ領境りょうざかいに当り、そこから城下町まで約一里ほどあった。
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
忠兵衛の祖先は山内但馬守たじまのかみ盛豊もりとよの子、対馬守つしまのかみ一豊かずとよの弟から出たのだそうで、江戸の商人になってからも、三葉柏みつばがしわの紋を附け、名のりにとよの字を用いることになっている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
山中の間道かんどうづたい、安藤対馬守つしまのかみどの五万石岩城平から、相馬の一行とは同じ往還を逆に、きょう広野村よりこの木戸の山越えにさしかかったところで。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大老殺害の記憶が消えないうちに、又、坂下門に、白昼、安藤対馬守つしまのかみの兇変があった。次の年には、もう大和やまと上方かみがたは、いくさだという、つきつめた噂が、江戸を暗くおおった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
もと越後新潟の人で、抽斎と伊沢蘭軒との世話で、そう対馬守つしまのかみ義質よしかたの臣塩田氏の女壻じょせいとなった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
サ、それは、なんとかして弟を世に出そうという、兄対馬守つしまのかみの真情でもござりましょうか。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
四男武茂たけもちは、対馬守つしまのかみに。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足が悪いのである。すぐ後から安藤対馬守つしまのかみが、頭脳のなかで謡曲うたいでも復習さらえているように、黙々と、しかし朗かな顔付きでやって来る。太田若狭守が大きく手を振って、足早に追いついた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)