宥恕ゆうじょ)” の例文
自分にしても、し会社の上役うわやくに会って誘われゝば、矢張り同じような態度を取るかも知れないと思って、宥恕ゆうじょすることに努めた。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
どんなことをも理解し宥恕ゆうじょしてくれる、眼に見えない友へ、自分の心を打ち明けるという慰安を、もの悲しい楽しみを、彼は懺悔ざんげのうちに味わった。
原詩及原作者について解説することは筆者の能くし得るところではないからひとえに読者の宥恕ゆうじょを請うばかりである。
「珊瑚集」解説 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
死ぬ考えもない子を殺したから謀殺で、それでも十二年までの宥恕ゆうじょがあったのである。このあわれな女も牢を出てから、すでに年久しく消息が絶えている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一歩も譲らない真理が、彼の胸をひざの下に押さえつけたことも、幾度であったろう。彼が光明から投げ倒されてその宥恕ゆうじょを願ったことも、幾度であったろう。
たちまちもう死ぬほど胸が悪くなる(しかも決して宥恕ゆうじょなんぞできる気持じゃない)
何も知らぬ頑是がんぜない私に、宥恕ゆうじょうような口調くちょうで言ったのを私は覚えている。
しばらく宥恕ゆうじょいたし候につき、すみやかに姦徒かんとの罪状を糺明きゅうめいし、厳刑を加うべし。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は唯哀願して只管ひたすら宥恕ゆうじょを請うばかりである。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そしてワイトマンの宥恕ゆうじょを哀願したのだった。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まさにパスカルの崇高な狂暴にとらわれんとしかかって、理性に宥恕ゆうじょを求めながら、痛切な苦悩に陥った」のだった。
対抗しながらもいかにそれを宥恕ゆうじょすべきものであるかを感じ、抵抗しながらもいかにそれをとうとんでいることであろう! おのれのなすべきところをなしながら
肉切庖丁は五度引きあげられ落とされて、受刑人を五度切りつけた。受刑人は五度ともその打撃の下にわめき声をたて、宥恕ゆうじょを求めながら生きた頭をうち振った。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
いかに大なる自尊心も、少しの恋愛に比べては、実にわずかなものであると感じた。彼はあらゆる品位を忘れて卑劣になり、新たにいく本も手紙を書いて、宥恕ゆうじょを嘆願した。
ただ恐ろしいことには、戦々兢々きょうきょうとしている。その恐怖の念は、反徒らに対するひどい冷淡さを宥恕ゆうじょするものである。また酌量すべき情況としては狼狽の念もいっしょにある。
それは年若き者にあっては、きわめて宥恕ゆうじょすべきほとんど罪なき快楽ではあるが、しかし芸術と魂とにとっては、致命的なものである。——クリストフはその快楽を知っていた。
それは道理ある恐怖であり、宥恕ゆうじょすべき憤怒である。この不思議なる革命はほとんど突撃の手を振るわなかった。敗亡したる王位に、敵対して血を流すだけの名誉をさえ与えなかった。