室咲むろざ)” の例文
ひんよしとよろこぶひとありけり十九といへど深窓しんそうそだちは室咲むろざきもおなじことかぜらねど松風まつ ぜひゞきはかよ瓜琴つまごとのしらべになが春日はるび
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
實際、彼女はいかにも無關心で、室咲むろざきの美しい花束をむしつて興を遣り、歌が終つた時には花束は見る影もなく床の上に散らばつてゐた。
わが見すぼらしき在るか無きかの花よ——花と呼ばれたればこそ、かくは今汝を呼ぶなれ——わが愛する室咲むろざきの花よ——
都育ちの室咲むろざき剣術、なかなかもってそんなものではない……山から切り出した石材そっくり恐ろしく荒い剣法じゃ……そろそろ呼吸いきが荒くなって来たぞ
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
室咲むろざきの薔薇ばら、窓からさす日の光、かすかなピアノの響、伏目になった辰子の姿——ポオト・ワインに暖められた心には、そう云う快い所が、代る代る浮んだり消えたりした。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
室咲むろざきにした優しい桃色の花や、縁側に釣した鸚鵡の眞白い羽の色なぞが一瞬間も早く見たくなつて、列車の進行をば寒さと暗さに苦しめられた昨夜の旅よりも更にもどかしく思つた。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
には桜さかるをわがへい室咲むろざきの薔薇ばらははやもしぼめり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)