定法じょうほう)” の例文
「それは油屋が御定法じょうほうに触れなかったからよ、法に触れるようなことをしねえのに、ただ強欲というだけで繩をかけるわけにはいかねえ」
暴風雨の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ごぞんじの安楽村に、おうっていう安宿やすやどがありまさ。宿屋掟やどやおきてのご定法じょうほうで、毎晩の泊り客には、行く先、職業、住所、年齢をちゃんと書かせる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰か人心に定法じょうほうなしという、同じ盤上に、同じ球を、同じ方向に突けば、同一の行路をたどるごとくに、余の心は君の心の如くに動いたのである。
我が子の死 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
巻軸になった竜頭りゅうずは六分、これは定法じょうほうです、毛の様に伸びた穂は、四寸あまり、それを右手につまみ上げると、穂先を左の指の腹で軽く撫でて見ます。
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
僕は探偵小説を愛読してますが、中から鍵のかかっているドアを、急いでひらく場合には、巡査が体当りでドアを破るのが定法じょうほうのようになっていますね。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうでねえ、三度笠が定法じょうほうだから、かぶって行くがよかろう、江川の邸で笑われても詰まらねえからな」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それでも信次郎は運がいいのです。もし生きていたら義母殺しの大罪人、引き廻しの上で磔刑はりつけになるのが定法じょうほうであるのを、畳の上で死ぬことが出来たのは仕合わせでした。
お金持ちは我儘わがままだから、そうなると、あっちの茶屋へいっているといえば、なんでももらって来いというのが、古来、くるわの女に関しては、ことさらに定法じょうほうのようなお客心理だ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
日本中の結構なもの、立派なもの、みんな大江戸にあつまるのが、天下の定法じょうほうなんだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「ハハハハ厭ならことわるのが天下の定法じょうほうだ。断わられたって恥じゃない……」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが定法じょうほうさ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「闇夜をえらぶのが、夜襲の定法じょうほうになっています。ですから今宵のような月明りに、敵はひとしお安心していましょう」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「コマ札というやつがあって、貸元からそれを買って張るのが定法じょうほうなんでげすが、そういうことはこの場では行われませんから、まあ、ようござんす、何ぞおかけなさい」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
殊に十両以上の金であれば、死罪に処せられるのが定法じょうほうである。それを承知しながら新次郎がやすやすと承知したのは、お節のことばに一種の謎が含まれていたからであろう。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先にすることが定法じょうほうになっているのだ。さあ、この次は籠手こて
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)