安寧あんねい)” の例文
しかし争うほどの事ならざる以上は世と共に推遷おしうつるのが、自分のためかつ世間のためであろう。すなわち社会の安寧あんねいはそれで持って行く。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「つい、大変なことをしてしまった。人民の安寧あんねいを守る提轄ていかつが、人民を撲り殺した。こいつは、ただですむはずはない」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃は巡査と云う人民の安寧あんねいまもってくださる職務のものがございませんゆえに、強いもの勝ちで、無理が通れば道理引込ひっこむのたとえの通り、乱暴を云い掛けられても
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかるに講和論者こうわろんじゃたる勝安房かつあわ氏のはいは、幕府の武士用うべからずといい、薩長兵さっちょうへいほこさき敵すべからずといい、社会の安寧あんねい害すべからずといい、主公の身の上あやうしといい
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
到底インドの安寧あんねいを保たれないことは明らかなすうでございましょうから、おそらくその事をおもんぱかって英国はチベットに対し深き注意を加えて居るのではあるまいかと想像されたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「吸血鬼事件が片づいても、まだ片づかぬものが沢山ある。帝都の安寧あんねい秩序ちつじょたもつために、この際やるところまできまりをつけるのだ。ここで安心してしまう者があったら、承知しないぞ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すなはち彼等はもつぱら腕力を用ゐて或組の果報と安寧あんねいとを妨害せんと為るなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
日常生活の確保された秩序と安寧あんねいは意にかなわぬものであって、市民的な組織が少しでもゆるんだり、世の中が少しでも混乱したり災難にあったりするのは、喜ばしいことにちがいないのである。
もっと自由であったら、彼女らはいろんな束縛を求めて、そこに一種の愉悦と安寧あんねいとを見出すだろう。またさほど自由でなかったら、彼女らはいろんな束縛に忍従して、それを破り捨て得ないだろう。
安寧あんねい天皇
花もも取る者はついにみきも根も取り尽し、その結果は社会の進歩も安寧あんねいあやうくするものであろうと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
皇室を重んじ、秩序をみだす賊子を討ち、民の安寧あんねいを護らんとは、われわれの初めからの鉄則である。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち金銭財産を精神化するにあらざれば、社会の安寧あんねい進歩は覚束おぼつかない。昭憲皇太后しょうけんこうたいごう御歌おんうた
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)