かへ)” の例文
その種がかへつたときには桑の木もすくなくなつてたし人手もなくてとてもそれだけの蚕をかふことができなかつたので
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
もう雛がかへりさうになつたのと殆ど一しよにその藪に一めんに眞白な、好いにほひのする小さな花が咲き出したのに、まあどんなにそいつは面喰つたことだらうと
巣立ち (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
かへりて後僅かに半月、或は母鶏の背にのぼり、或は羽をくゞりて自から隠る、この間言ふ可からざるの妙趣ありて余を驚破せり。細かに万物を見れば、情なきものあらず。
縱令よし、それがまつたたまごかへ邪魔じやまをしないにせよ』とつてはとは、『それにしても、わたし晝夜ちうやへび見張みはらなければならない!さうへば、わたしはこの三週間しうかんちツともひつじかげないが!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
馨が前橋へ出かけて行くのは、繼母に取つて、優しい庭鳥の羽含はぐくかへした家鴨の子が水の中へ逃げて行くやうな痛ましさがあるとは察しながらも、義雄はなほ弟の出來た戀には少しも反對が無かつた。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
農村の煩ひとなる生き物の中、夜な/\里に出て成熟した田畑を根こそげ荒して行く鹿、年によつてはむやみにかへつて、苗代田を螫み尽す蟹、かうした苦い経験が、此ほかひ歌を生み出したのである。
かへらざるたまごあたたむる文鳥のしぐさがかなし呼びて遊びぬ
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
「まだかへりません。」と小鳥ことりこたへていひました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
ここにてかへしし雛と共に
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かへりしわれかの心地。
焔の后 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
こなひだあの集會堂オオヂトリアムの裏のところで、小鳥の巣を見つけたんだけれどね。花のさいた野茨の茂みの中で、もう五六羽雛にかへつてゐたんだがね、——あんなところに巣を
巣立ち (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
私のやうな者が神田のまんなかに生れたのは河童が沙漠でかへつたよりも不都合なことであつた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
「まだたまごかへりませんか。」
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)