存在ぞんざい)” の例文
御米はこの存在ぞんざいな言葉を聞いてそのままうちへ帰ったが、心の中では、はたして道具屋が来るか来ないかはなはだ疑わしく思った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
石鏃は石器時代遺跡ゐせきに於て他の遺物ゐぶつとも存在ぞんざいするを常とすれど、左の諸所にては山中に於て單獨たんどくに發見されし事有るなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そして、校長は気毒相きのどくさうな顔をしながら、健には存在ぞんざいな字で書いた一枚の前借証を返してやる。渠は平然けろりとしてそれを受取つて、クル/\と円めて火鉢にべる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「何處へ行つても枯野で寂しい。二三日大阪で遊んで、十日ごろに歸省するつもりだ。」と鉛筆で存在ぞんざいに書いてある文字を、鐵縁の近眼鏡を掛けた勝代は、目を凝らして判じ讀みしながら
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
父親は只困ると云うだけで番頭を無理だと云って怨んだこともない位だから、子供が鬼がこわい、お廻りさんがこわいのと同じように、高利貸と云う、こわいものの存在ぞんざいを教えられていても
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
御米およねこの存在ぞんざい言葉ことばいて其儘そのまゝうちかへつたが、こゝろなかでは、はたして道具屋だうぐやるかないかはなはうたがはしくおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(網の存在ぞんざいに付きてはたしかなる證據しやうこあり。此事に關しては再び記す所あるべし。)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「それについて、あなたに伺おうと思って上がったんですがね」と鼻子は主人の方を見て急に存在ぞんざいな言葉に返る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「原口さんが御出おいでになりました」と云ふ。只今帰りましたといふ挨拶をはぶいてゐる。わざとはぶいたのかも知れない。三四郎には存在ぞんざいな目礼をした許ですぐにて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鼻子の先刻さっきからの言葉遣いが初対面の女としてはあまり存在ぞんざい過ぎるのですでに不平なのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)