やもめ)” の例文
この土地は人情がよくないから、親のない子ややもめでは暮していけない。阿繊ももう、あなたの家のよめになっておる。ここを
阿繊 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
やもめのお勝も源兵衛の妹だけあって気性の勝った人で、お園が男のように竹馬に乗ったりして遊ぶのを叱言こごともいわずに、五刈の男姿にしておいた。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
中ざしキラキラとさし込みつつ、円髷まるまげつややかなる、もとわが居たる町に住みて、亡き母上とも往来ゆききしき。年紀としわかくてやもめになりしが、摩耶の家に奉公するよし、予もかねて見知りたり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある裕福な商家のやもめでコンドラーチエワという女は、まだ四月の末ごろからリザヴェータを自分の家へ引き取って、お産の済むまでは外へ出さないように取り計らったほどである。
永らくやもめ暮しをしていて、一人で豆をひいていたのだったが世話する者があって夫婦養子をしたところが入籍してしまってから養子たちは養母をひどくいじめだしたという近所の噂だった。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その姉は早く夫に死なれて一人のむすめを伴れてやもめぐらしをしていたが、これも病気になって秋の陽の入るように寂寞として死んで往った。姉の子はフジと云ってその時十二三歳の小女こむすめであった。
一緒に歩く亡霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
子をひとりもりて田を打やもめかな 快宣かいせん
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
やもめとりぢやまで。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
「二、三年前、やもめばあさんと女の子が来て借家をしていたが、前月その婆さんが死んじゃったから、女の子は独りぼっちで、親類もないから泣いてるのだよ。」
阿繊 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
お祖母様が雛児ひよこのように抱いてござった小児こども衆も二人、一所いっしょに死んだぞの。やもめつづきの家で、後家御ごけご一昨年おととしなくならした……娘さんが一人で、や、一気に家を装立もりたてていさっしゃりますよ。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)