嬌瞋けうしん)” の例文
錢形平次の執拗しつあうな疑ひに對して、嬌瞋けうしんを發した姿です。それは怒つた孔雀くじやくのやうな、不思議な氣高さとはなやかさを持つたものです。
たゞし嬌瞋けうしんたりとふのをおもつたばかりでも、此方こつちみゝほてるわけさ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
嬌瞋けうしんを發した顏が近々とくんじて、八五郎は思はず手を擧げて自分の額に迫るあやかしを拂ひ退けたほどです。
小母をばさんもへんだ、第一だいいち嬌瞋けうしん」をはつしようし……そこンところがなんとなく、いつのまにか、むかうが、あねが、あねが、といふから、年紀としわたしうへなんだが、あねさんも、うちつけがましいから、そこで
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其處に居たのは、女主人のみさを、——この春死んだ小倉嘉門の美しい後家でした。一度はハツと驚いて逃げ身になりましたが、次の瞬間にはかまへを直して、眞正面から嬌瞋けうしんの眼を平次に向けたのです。
それは澁皮しぶかはけた、なか/\のきりやうでした。が、身扮みなりは大したことも無く、顏には紅白粉の氣さへありませんが、嬌瞋けうしんを發すると、燃え立つやうな情熱が、ともすれば八五郎を壓倒するのです。
お組の爆發する嬌瞋けうしんの前に八五郎はまことに散々です。