おどし)” の例文
「おじゃッた。このかたもおなじような打扮ではおじゃッたが、具足のおどしがちと濃かッたゆえ、二の大将ほど目立ちなさらなかッた」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
おどし空咳からぜきをした。機嫌執りをしてもその手は喰わぬと云う意味である、ところが相手はいっこう感じない様子で
嫁取り二代記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
博徒伝吉、おどしの長ドスをひらめかし、乾児こぶん、得ものを振って出づ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
磔柱はりつけばしらがなんのおどしになるものか。
具足のおどし濃藍こいあいで、魚目うなめはいかにも堅そうだし、そして胴の上縁うわべりはな山路やまみちであッさり囲まれ、その中には根笹ねざさのくずしが打たれてある。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
頼胤も兄にならってそちらへ眼を向けた。そこには一領の甲冑が飾ってあった。青、黄、赤と三段おどしの美しいよろいで、かぶとにも腹巻にも菊水の金章が打ってあった。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その打扮いでたちはどんなだか。身に着いたのは浅紺に濃茶の入ッた具足でおどしもよほど古びて見えるが、ところどころに残ッている血のあとが持主の軍馴いくさなれたのを証拠立てている。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)