奔河ほんが)” の例文
府中城の大手に向って、奔河ほんがの羽柴勢は、鶴翼かくよくのひらきを示した。そしてただ千瓢せんぴょうの馬印だけが、しばらく動かずにあった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
築土ついじの内側には、すでに門側の衛門小屋やうまやの辺りから駈けつけた織田のさむらい達が、得物えものを選ばず押っ取って、奔河ほんが決潰けっかいをふせぎに当ったが
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとたび敗れんか、魏や呉は、手を打って、奔河ほんがの堤を切るように蜀へなだれ込むだろう。帝はまだ幼くして、蜀都を守るには余りにまだお力がない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その水脚みずあしはやいか、一鞭いちべん東へさす彼が迅いか。石井山はあとになった。全軍また奔河ほんがのごとく急ぎに急いでいる。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊勢方面の信雄の支城や隠密おんみつからは、おもわぬ箇所の堤を切って、濁水の奔河ほんがが向って来たように
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根来ねごろへ、根来へ、とそれは奔河ほんがをなして行く。早くも、根来の衆徒は、諜報ちょうほうにこぞり立って、泉州せんしゅう岸和田きしわだ附近から、千石堀せんごくぼり積善寺しゃくぜんじ浜城はましろなどにわたって、とりでを構え
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別働隊の加藤次景廉や甲斐源氏のともがらは、駿河国で出会い、いよいよ奔河ほんがの勢いを加えた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この語は、それまで、井の水のようであった光秀を、いちどに奔河ほんが形相ぎょうそうにさせた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操は審配のはかりごとを観破していたので、数万の飢民が城門から押出されてくると、すぐ大兵を諸所に伏せて、飢民のあとをついて奔河ほんがの如く出てきた城兵を直ちに挟撃してこれに完全なる殲滅せんめつを加えた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、奔河ほんがのなかへ、子を投じた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)