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大身代
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おほしんだい
一
軒にて
住居なし
此近邊の
大身代なり主は
入聟にて
庄三郎と云
今年六十
歳妻は此家の
娘にて名をお
常と
呼び四十
歳なれども
生得派手なる事を
貯へしが後には
江戸へも
見世を出さんと
通り
油町へ
間口十間
奧行は
新道迄二十間餘の地を
買土藏もあり
立派なる
大身代となり
番頭若い者
都合廿餘人に及びける
事偏に井筒屋茂兵衞が多分の
善得意を
振り本町通りの小西屋というては
名高き藥種問屋江戸
指折の
豪商にて
誰とて知ぬ者もなき
大身代の嫁に成とは娘が
出世此上なき喜びなれども
此方はまた見る影もなき
浪人者釣合ざるは不縁の
基決して是を