大蔵だいぞう)” の例文
旧字:大藏
奝然は印度へ行くのは止めて、大蔵だいぞう五千四十八巻及び十六羅漢像、今の嵯峨清涼院しょうりょういん仏像等を得て、寛和元年に帰朝したのであった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こう見えても、おれは六波羅の放免すべてを締めくくッている諜者組のかしら、本名おし大蔵だいぞうという者だ。忍というからには伊賀の産。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風葬は一に大蔵だいぞうとも云い、屍体を焼きそれを粉末となし、風のままに吹き飛ばしてしまう葬法である。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
「下赤坂のお城からこの御領内には、おし大蔵だいぞうという御家来さまが眼をひからしているってえのを、てめえ知らずに入りこんできたのか」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おらあおし大蔵だいぞうの弟分、大蔵が消えたあと、放免頭となったおし権三ごんざだ。おめえたち夫婦ふたりの面あ、藤井寺のとき、この眼の奥におさめてある。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とくにおし大蔵だいぞうにすれば、下赤坂から尾行つけて来たものを、途中、不覚にも道から崖下へ蹴落されていたことでもあるのだ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「は。それはいま消しとめましたが、おし大蔵だいぞうがやって来て、深夜ながらお目にかかりたいといっておりますが」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そいつあ、親分も同じですぜ。おし大蔵だいぞうがまだ生きてこの世の辻を歩いているなんて聞かせても、六波羅中たれひとり、まにうける者はねえでしょう」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも当然で、裏金剛から葛城かつらぎ間道かんどうすべて遮断されている実状なのだ。——そんな中をもおし大蔵だいぞうなればこそ、首尾よくここまで来られたものといえよう。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町の四ツ辻だからすぐ知れる所に奈良井の大蔵だいぞうさんというて、お百草を薬にしておろしている問屋がある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いにしえの名僧は、大蔵だいぞうへ入って万巻まんがんを読み、そこを出るたびに、少しずつ心の眼をひらいたという。おぬしもこの暗黒の一室を、母の胎内たいないと思い、生れ出る支度をしておくがよい。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、その騒ぎと入れちがいに、おし大蔵だいぞうがもどって来た。大蔵にはこんな事も予想のうちにあったのだろうか。べつに驚きもしなかった。そしてすぐ彼も山から姿を消した。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おそれ入ります。何せい、総頭そうがしらおし大蔵だいぞうが、一昨日来、消えてしまいましたので」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それこそ生々しい大蔵だいぞうの教典だ。それによってこそ、初めて、真の仏教がものをいう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして充血して赤くただれた眼と、陽にあたらないためにろうのように青白くなった顔をもって、大蔵だいぞうの闇から彼がこの世へ出てきた時には、世は木枯こがらしのふきすさぶ建久けんきゅう七年の真冬になっていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の念願は、興福寺の経蔵きょうぞうのうちにあった。許しをうけて、その大蔵だいぞうの暗闇にはいった範宴は、日も見ず、月も仰がず、一穂いっすいともをそばにおいて、大部な一切経いっさいきょうに眼をさらし始めたのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やっ、親分。もしや大蔵だいぞう親分じゃございませんか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)