大構おおがまえ)” の例文
ト向うがくん三等ぐらいな立派な冠木門かぶきもん。左がその黒塀で、右がその生垣。ずッと続いて護国寺の通りへ、折廻した大構おおがまえ地続じつづきで。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片側は角から取廻した三階建の大構おおがまえな待合の羽目で、その切れ目の稲葉家の格子向うに、小さな稲荷いなりの堂がある。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
合歓ねむの花ぞ、と心着いて、ながれの音を耳にする時、車はがらりと石橋に乗懸のりかかって、黒の大構おおがまえの門にかじが下りた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と思われないでもない——玄関の畳が冷く堅いような心持とに、屈託の腕をこまぬいて、そこともなく横町から通りへ出て、くだんの漬物屋の前を通ると、向う側がとある大構おおがまえの邸の黒板塀で
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
荒物屋のばばあはこの時分からせわしい商売がある、隣の医者がうちばかり昔の温泉宿ゆやど名残なごりとどめて、いたずらに大構おおがまえの癖に、昼も夜も寂莫せきばくとして物音も聞えず、その細君が図抜けて美しいといって
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
敷石のぱっとあかるい、静粛しんとしながらかすかなように、三味線さみせんが、チラチラ水の上を流れて聞える、一軒大構おおがまえの料理店の前を通って、三つ四つ軒燈籠の影に送られ、御神燈の灯に迎えられつつ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)