大年増おおどしま)” の例文
お半といえば若そうにきこえるが、これは長右衛門に近い四十四五歳の大年増おおどしまで、照降町てりふりちょうの駿河屋という下駄屋の女隠居である。
老先生はながのいたつき、後妻のおれんさまという大年増おおどしまが、師範代峰丹波みねたんばとぐるになって、今いい気に品川まで乗りこんできている源三郎を、なんとかしてしりぞけ
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
酌は醗酵し過ぎたような大年増おおどしま、万兵衛の妾でお常という、昔はずいぶん美しくもあったでしょうが、朝寝と美食と、不精と無神経のために、見事に脂肪が蓄積して
表梯子おもてばしごの方から蝶子ちょうこという三十越したでっぷりした大年増おおどしま拾円じゅうえん紙幣を手にして、「お会計を願います。」と帳場の前へ立ち、壁の鏡にうつる自分の姿を見て半襟はんえりを合せ直しながら
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そちこち転々した果てに樺太からふとまでし、大泊おおどまりから汽車で一二時間の豊原で、有名な花屋に落ち着いたのだったが、東京へ舞い戻って芳町へ現われた時分は、もう三十の大年増おおどしまであり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その男に寄り添いながら、非常にあだっぽい大年増おおどしまがそろりそろりと歩いてきた。
五階の窓:05 合作の五 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長火鉢には鶴吉より年上らしい四十前後の大年増おおどしまが、しどけない伊達巻だてまきに丹前をひっかけ、燗銅壺かんどうこに入れるばかりの銚子を猫板にのせ、寝白粉ねおしろいをつけて待っているといったふうな家庭でありました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朽葉色くちばいろあか附きて、見るも忌わしき白木綿の婦人おんなの布を、篠竹しのだけさきに結べる旗に、(厄病神)と書きたるを、北風にあおらせ、意気揚々として真先まっさきに歩むは、三十五六の大年増おおどしま、当歳のななめに負うて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひとりはいぎたなく立てひざをした四十がらみの大年増おおどしま
豊艶と云わんよりあぶらぎった大年増おおどしまと云う形でした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女は三十七八の粋な大年増おおどしまで、お粂と同じ商売の人であるらしいことはお仙にもすぐにさとられた。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これはまた似てもつかぬ四十すぎの大年増おおどしまなのでした。
金のかかったなりをした、四十あまりの大年増おおどしまだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)