大喧嘩おおげんか)” の例文
朝日屋の夫婦は五日に一度くらいの割合で大喧嘩おおげんかをした。亭主ていしゅの名は勘六、細君はあさ子、どちらもとらだかうまだかの三十二歳であった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そりゃ行くだろうじゃありませんか。僕とお兼を見たって解るでしょう。結婚してからまだ一度も大喧嘩おおげんかをした事なんかありゃしませんぜ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それからあんな大喧嘩おおげんかをしてあッと云う間に形勢が変り、今まで此処に立っていた彼女がもう居なくなってしまったんだ。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
農家の子弟が面籠手こてかついで調布まで一里半撃剣の朝稽古に通ったり柔道を習ったりしたものだが、六年前に一度粕谷八幡山対烏山の間に大喧嘩おおげんかがあって
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
持って来て「この間あなたとゲーセと大喧嘩おおげんかなされましたが、ありゃあなたがどこそこの乞食に金を遣ったからそれでゲーセが怒ったという世間の評判です」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その代りに仕入れた樺太産まれの染福は、自称女子大出の、少し思想かぶれがしていたところから、ある夜自暴酒やけざけに酔って、銀子の晴子と客のことで大喧嘩おおげんかとなり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
だから、いやらしくって、にくらしくって、そうして、なんだか淋しくて、思いきり我儘して悪い事をして、そうしてお母さんと大喧嘩おおげんかをしたくて仕様が無かったの。
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かみさんのアマリヤ・フョードロヴナとはつい一週間ばかり前に、もう二度と顔を合わせないような大喧嘩おおげんかをしたくせに、コーヒーを飲みにこいと呼んだじゃがせんか。
三人の者が大喧嘩おおげんかになる。そこへ馬にまたがった王子が一人、森の中の路を通りかかる。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人が殺すのいかすのと幾度も大喧嘩おおげんかをやった話もあった、それでも終いには利助から、おれがあやまるから仲直りをしてくろて云い出し誰れの世話にもならず、二人で仲直りした話は可笑しかった。
姪子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
まるで大喧嘩おおげんかの後のようにあたりは散らかっているじゃないか……
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
それは新撰組と大阪の大相撲とが大喧嘩おおげんかをしたその仲直り。
お島はそれがしゃくにさわったといって、後で鶴さんと大喧嘩おおげんかをしたほどであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼は日本刀を一本持っていた。柄のところがさらし木綿で巻いてあり、刀身に刃こぼれがある。なんとか坑山で大喧嘩おおげんかがあったとき、十幾人かを敵にまわして斬りあいをやり、幾人とかを斬った。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「三保の松原で大喧嘩おおげんかがある、早く行って見ろ」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)