大和屋やまとや)” の例文
きょうは中津川大和屋やまとやで百枚の保金小判を出して当時通用の新小判二百二十五両を請け取ったとか、そんなうわさが毎日のように半蔵の耳を打った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「よくねえ、」と声を懸けて、逸早いちはやく今欄干に立顕たちあらわれたその女中が出迎えた。帳場のあかりと御神燈の影で、ここに美しく照らし出されたのは、下谷したや数寄屋町大和屋やまとやわけの蝶吉である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……こんど大和屋やまとやが名題に昇進した披露をかねて立花屋の『鯵売』のむこうを張って、常磐津文字太夫ときわずもじたゆう岸沢式佐きしざわしきさ連中で『小鰭の鮨売』という新作の所作事を出すことにきまりました。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
取出しこれは些少させうながら御骨折料ほねをりれうなりと差出しければ庄藏は大いによろこ委細ゐさいかしこまり候とよく未明みめいより大坂中を欠廻かけまはつひに渡邊橋向ふの大和屋やまとや三郎兵衞の控家こそ然るべしとかり入のことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「場所は芝の露月町、大和屋やまとやという宿屋の二階だそうです」と米沢が答えた
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
葉子の今度の電話では、彼女は都合によって田舎いなかへ帰ることになったから、立ちがけにちょっと話したいこともあるので、上野駅前の旅館大和屋やまとやまできっと来てくれるようにというのだった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
石段を下り切つたぐ前に、眞ツ黒な古ぼけた家が、やみの中から影の如く見えてゐた。内部なかのラムプの光で黄色く浮き出した腰高こしだか障子しやうじには、『御支度所おしたくじよ大和屋やまとや』といふ文字もんじぼうとして讀まれた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
七代目坂東三津五郎(屋号、大和屋やまとや)。本名、守田寿作。
七代目坂東三津五郎 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
大和屋やまとやだ、大和屋だ』
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大和屋やまとや若久わかひささ。」