大々だいだい)” の例文
奇麗な女は幾人いくたりも見たが、なんだか大々だいだいしてみえたのだ。色の浅黒い大きな顔で、鼻がすっと高くってしおのある眼だった。った眉毛まゆげがまっ青だった。
低くても大々だいだいとして豊満に見えるけれども、光代の方はいかにも母親が云う通りコマシャクレて貧弱に見える。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大きな叔父の後姿よりも、向う側にみ出している大々だいだいした夫人のかっぷくが、まずお延の眼に入った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その上いささか狡猾わるごすく、深川へ遊びにお出のときは、芸者どもの祝儀を奉書紙に包んで恭しく水引を掛け、金何百疋と大々だいだいと書いたものを用意なされて一同に下される。
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
湯宿やどの二階の、つらつらと長いまわえん——一方の、廊下一つ隔てた一棟ひとむねに、私の借りた馴染の座敷がながれに向いた処にあるのです——この廻縁の一廓は、広く大々だいだいとした宿の
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
春亭九華などというと如何にもやさしげだが、九華は縦も横も大々だいだいした巨漢であった。
剣豪のうえにだい剣豪あり、そのまた上に大々だいだい剣豪があるから、物事がこんでくる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すばらしく大々だいだいとした珍しいもので、ちょうど女がひとり、またを広げてしゃがんで、上半身をまっすぐに、両手を前へ伸ばして、まるで、ヤトラカン・サミ博士を背後から抱擁しているように見える
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
関羽は、大々だいだいした腹中から、大きな酒気を吐いて、憮然ぶぜん
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葉子は潮風に色もややあかくなって、大々だいだいしくふとっていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大々だいだいいろりが切ってある。見事な事は、大名のひとたてぐらいは、楽に休めたろうと思う。薄暗い、古畳。せきとして人気ひとけがない。……猫もおらぬ。に火の気もなく、茶釜も見えぬ。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浜子夫人のほうも、寛大で謙譲ひかえめで、そのくせ、どこは硬骨ほねのあるこのキャラコさんが大々だいだいのひいきで、進級祝いなどには、あッと眼を見はるような豪勢な祝品いわいものをかつぎ込んだりする。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)