変哲へんてつ)” の例文
旧字:變哲
何の変哲へんてつもない、たところ普通の、如何にも老舗しにせの寮らしい、小梅や寺島村にはざらにある構えの一つに過ぎなかった。
同様に先生の顔も以前の如く、何の変哲へんてつもない土気色を帯び、ふくれッつらを小女の勝手にいじくらせてはいるけれども、それがいかにも詰まらなそうである。
蘿洞先生 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
柳営の諸事情が、彼には幸いしていたものか、華雲殿の件は不問のまま、その年を越え、彼のぶらり駒は、依然何の変哲へんてつもなく、武者所の門へ折々通っていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入ってみると、そこは何の変哲へんてつもないカフェだった。広いと思ったのは、表だけで、莫迦ばか奥行おくゆきのない家だった。帆村は先登せんとうに立って、ノコノコ三階まで上った。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一たびふぐを前にしては、明石鯛の刺身も、鬼魚おこぜのちりも変哲へんてつもないことになってしまい、食指が動かない。ここに至って、ふぐの味の断然たるものが自覚されて来る。
河豚のこと (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
一見、変哲へんてつもないこの古手帳の中には、ある男の不敵な研究の全過程が書きつけられてある。
黒い手帳 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
変哲へんてつもねえ杉の箱じゃあねえか、これが一体どうしたんだい?」友蔵は手箱を取り上げた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
変哲へんてつもない只の犬だが、八百万石御寵愛の犬とあってはこれも御威光広大、位も五位と見えて、尾の長い五位さまがいとも心得顔に、将軍家おしとねのかたわらへちょこなんと坐ったところへ
「恐れ入りやした。お手の筋で。……鴎硯さんは、さかえ屋へ上がっていやしたが、面白く騒いで寝て今朝七ツ頃に帰って行ったという、こちらに取っちゃア、何の変哲へんてつもねえ話なんで。……どうも相済みません」
ひとたびふぐを前にしては、明石だいの刺身さしみも、おこぜのちりも変哲へんてつもないことになってしまい、食指が動かない。ここに至って、ふぐの味の断然たるものが自覚されてくる。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
と、変哲へんてつもない顔したが、すぐつけ加えて
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)