墓標ぼひょう)” の例文
おかてられた、あたらしい墓標ぼひょううえを、いまも、あさは、西にしやまから、ひがしさとへ、晩方ばんがたには、ひがしそらから、西にしそらへと、かえっていくからすのれがあります。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこには、真新しい寒冷紗かんれいしゃづくりの竜幡りゅうはんが二りゅうハタハタとうごめいている新仏にいほとけの墓が懐中電灯の灯りに照し出された。墓標ぼひょうには女の名前が書いてあったが覚えていない。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう一人人的資源をつくってこい……そういって一週間の休暇きゅうかを出す軍隊というところ。生まされる女も、子どもの将来が、たとえ白木しらき墓標ぼひょうにつづこうとも、あんじてはならないのだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
と云う小さな墓標ぼひょうが立てられた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きちんと区画くかくした墓地に、墓標ぼひょうだけがならんでいる新らしい兵隊墓。人びとの暮しはそこへ石の墓を作って、せめてものなぐさめとする力も今はなくなっていることを、墓地は語っていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
けもののようにぱだかにされて検査官の前に立つ若者たち。兵隊墓に白木の墓標ぼひょうがふえるばかりのこのごろ、若者たちはそれを、じじやばばの墓よりも関心をもってはならない。いや、そうではない。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)