はま)” の例文
証拠の品はことごとく自分の懐中へ移したのが、香袋だけは、竹へ首を刺し立てる時に、抜け落ちて、紫殻の中にはまったのだった。
鉄砂の破片が、顔一面に、そばかすのようにはまりこんだ者は爆弾戦にやられたのだ。挫折や、打撲傷は、顛覆された列車と共に起ったものだ。
氷河 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
愉快な問題にも、不愉快な疑問にも、僕は僕そッくりがひッたり当てはまる気がして、天上の果てから地の底まで、明暗を通じて僕の神経が流動瀰漫びまんしているようだ。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
給仕が私達の註文を取りに来ると、華奢な鉄格子のはまった窓を見ていた喬介は、その少女を捕えて、何階の窓にも一様に鉄格子が填っている、と言う事実を確かめていた。
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
控所ひかへじよは、かべおほきい額縁がくぶちはまつた聖像せいざうかゝつてゐて、おも燈明とうみようげてある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
格子戸のはまった、玄関のところに小泉商店とした看板の掛けてある家の奥で、実は狭い庭の盆栽に水をくれた。以前の失敗に懲りて、いかなる場合にも着物は木綿で通すという主義であった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おおさいかにも紋十郎じゃ、おおかたこうと眼を付けて、計られると見せて置いたら、いつかこっちのつぼはまり、女さかしゅうして牛売り損ない、可愛い男をうぬが手で、巧々うまうま死地へ落とし入れたなあ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
繰り返してる中にだん/\惡い方へはまつて行く
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
どう見ても、わざとの負傷と思われる心配がない、腰に弾丸たまはまっている初田が毛布からむく/\頭を持上げた。
氷河 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
控所ひかえじょは、かべおおきい額縁がくぶちはまった聖像せいぞうかかっていて、おも灯明とうみょうげてある。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
繰り返してる中にだんだん悪い方へはまつて行く
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)