ぼん)” の例文
実際禅寺ぜんでらぼんさんなどいふものは、お客を小芋こいも煮転にころばし位にしか思つてゐないものなので、それをよく知つてゐる橘仙氏は急に逃げ腰になつた。
老爺 只今のおぼん様、ヘンリー四世とか云う王様から偉う、いかめしい身なりのお使者が見えましたで。
胚胎 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
京の六条でうたわれた大家のぼんち真三郎はんの本色は少しもなく、あの三輪の里の不良少年が、そっくり乗りうつりの形になっておりますよ、お気をおつけなさい
「元気にしてはりましたで。秀ぼんがお腹こわしやはった時かて、看護婦よかよっぽど雪子とうさんの方が看病の仕方心得てはる云うて、御寮人様ごりょうんさん感心してはりました」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
二丈ぼんや、ろくろっ首の記憶にしても、仮りにその形を描き得たとしても、それは後年の修飾である。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
ぼんちゃんぼんちゃん!」と私は心の中で云った。それは堯が生れて間もない頃私がいつも呼んだ言葉だった。それから私はまた暫くして、「堯、堯!」と心の中でくり返した。
生と死との記録 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
もとは魚問屋のぼんぼんであると分ると、可哀想だと、帳場に使ってくれた。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「知らんかい、あれや、岡崎の松林に住んでいるぼんじゃげな」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おい、ぼんさん(小僧のこと)まけとき」
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ぼんさんはイケマヘンと云うから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
でも、あいそ笑いをして此方こちらの顔色をうかがい窺い、心持ちあごを突き出して訴えるような鼻声で話しかける様子に、矢張「船場せんばぼんち」らしい甘ったるさが残ってはいた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「京の六条の蔦屋つたやぼんちの色男の真三郎さんは、あなたですか」