地蔵菩薩じぞうぼさつ)” の例文
こういって地蔵行者じぞうぎょうじゃは、小さい手に取りまかれながら、背なかあわせにおぶっている地蔵菩薩じぞうぼさつとそっくりのような人のよい笑顔えがおをつくった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暮れ果てずともしは見えぬが、その枝の中を透く青田越あおたごしに、屋根の高いはもう我が家。ここの小松の間を選んで、今日あつらえた地蔵菩薩じぞうぼさつを——
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その部屋の飾りつけは、夜明けだか夕暮だか分らないけれど、峨々ががたるいわおを背にして、頭の丸い地蔵菩薩じぞうぼさつらしい像が五六体、同じように合掌がっしょうをして、立ち並んでいた。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仏工は古来より阿弥陀如来の立像と、地蔵菩薩じぞうぼさつの立像をむつかしい物の東西の大関にたとえてある。
武士ぶしをすてて竹生島ちくぶしまにかくれた時、そして、地蔵菩薩じぞうぼさつの愛のたびしまをでたとき、かならず、終生しゅうせいかたなくまいぞと心にちかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その笠をかぶって立てるさまは、かかる苦界にある娘に、あわれな、みじめな、見すぼらしい俄盲目には見えないで、しなびた地蔵菩薩じぞうぼさつのようであった。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どんなことがあっても、生涯しょうがい刀はくまい、刀はしていても手をかけまい! 地蔵菩薩じぞうぼさつの愛の体得たいとくをけっしてわすれまい!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
待てな、待てな、さてこうした時に、地蔵菩薩じぞうぼさつなら何となさる、と考えれば胸も開いて、気が安らかになることじゃ、と申されたげな。お婆さん、何と奇特な事ではないかの。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ですから、ひたすら和子わこのお育ちのみをたのしみに、ご信心でもなされたがいいと、私の地蔵菩薩じぞうぼさつのお影像えいぞうを手紙のうちに入れて上げようかと思っているの
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北辰妙見ほくしんみょうけんの宮、摩利支天の御堂みどう、弁財天のほこらには名木の紅梅の枝垂しだれつつ咲くのがある。明星の丘の毘沙門天びしゃもんてん。虫歯封じにはしを供うる辻の坂の地蔵菩薩じぞうぼさつ。時雨の如意輪観世音。笠守かさもりの神。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地蔵菩薩じぞうぼさつ祭れ、ふァふァ、」と嘲笑あざわらって、山のかいがハタと手拍子。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)