さいな)” の例文
なぐったりったり、散々に責めさいなんだ挙句、あろうことかあるまいことか! しまいには、その坊さんにね、此奴こやつが腰元をそそのかして
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
一日中炎天の下に旅行用のヘルメットをかぶって植木鉢の植木をさいなんだり、飼ものに凝ったり、猟奇的な蒐集物しゅうしゅうぶつに浮身をやつしたりした。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やつれたうれへるのをかれるにしのびなかつたからである。かれのさういふ意志いしなが月日つきひ病苦びやうくさいなまれてひがんだ女房にようばうこゝろつうずる理由わけがなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さいなまれた上にも嘖まれた彼女は——息が絶えると同時に、物自体のように取り扱われ、身に付けていた最後の粉飾物を、生前彼女を苦しめ抜いた楼主に奪われなければならぬかと思うと
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しかしながらかれ悲憤ひふんへぬこゝろさいなまうとするには與吉よきちいてまぬ火傷やけどがそれをおさへつけた。勘次かんじつかれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そうした金のために、十年の間、心も身体も、めちゃくちゃにさいなまれた彼女が、他の手段では、脱し切れない境地を、死をもって脱しようとすることは、もっとも至極のことのように思われたのです。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)