)” の例文
後から息をって、権叔父とともに追いついて来たお杉隠居はそのていを見ると、群衆を突きとばし、小脇差のつかに手をかけて歯をいた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長くものをいうと、息がれるのであろう。彼女は自分の胸を抱きしめて、そして、夢みるように幸福な眼をあげた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして山門を出てゆくと、彼方からただ一人で、弓のような腰には似合わない朱鞘しゅざやの大きな刀を横たえて、せかせかと、息をって来る老武士があった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊皿子坂は、ひどく急なので、わが屋敷の門へかかって、彼がこういう時には、いつも少し息をっている。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李家りけの伯父。無理をしなさんな。セイセイ息をっているじゃないか。その先の文句はひょうからいってやろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うるさい人だね。私に何かくことがあるならば、その辺で、水でも飲ませて、少し休ませてくれなければ駄目だよ。息がれて、返辞なんか、できやしない」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八十三郎がひそかに使いをやったので、叔父の小林鉄之丞が息せきって駈けつけて来たのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう断りながら、大息をって、雲母越きららごえの十町なわてを魔のように駈け、さがまつの辻までやがて来た。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息をって、ただ一通の表をさし出した。侍側の手から受取って、玄徳は一読するや否や
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親戚しんせきの小林鉄之丞てつのじょうが訪ねて来た。だらだら坂で、汗をかいたとみえ、少し息をって
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、まだ朝までにはだいぶある。常ならば、これしきの山道、苦にもせぬが、この二、三日は風邪かぜ気味か体が気懈けだるうて歩くと息がれてならぬ。悪い折にぶつかったものよ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お悦は、枯野を、まだ霜ばしらのある湿地を、息をって御薬園裏の原へ駈けた。
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、息をって、駈けて来た若い武士がある。待ちかねていた弥平治やへいじ光春だった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病後の新蔵は、駈けただけでも、蒼白まっさおになって、息をっていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そう、早くお歩きなさいますと、またすぐに息がれますぜ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息はれるし、助けを呼ぶにもこの深夜に誰がいよう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小侍が息をって、次の襖際ふすまぎわでその時云った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、息をって、また呶鳴った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、息をりながら——
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)