唐船からふね)” の例文
じつは唐船からふねが相変らず停ったも同様なので、自分で船を二そうもってみました。株を買ったのか。いや、と信助は口をにごした。
はじめて唐船からふねがあの長崎の港に来たのは永禄えいろく年代のことであり、南蛮船の来たのは元亀げんき元年の昔にあたる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
唐船からふね男爵は、心持その上品な顔をひそめて、やや胡麻塩になりかけた髭に、葉巻の煙を這わせました。
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
また、堺港さかいみなとは、本邦と海外とを結ぶ唯一の交易地でもあり、唐船からふね蛮船ばんせん入津にゅうしんも絶えない折から、長く乱脈な状態の下に業を停止されてあるのは、国家の損耗そんもうでもある。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男の子ならばむろ唐船からふねへ売りわたし、眉目みめよい女子おなごだと京の人々が、千里もあるように考えているあずまの国から那須野なすのの原をさらに越えて、陸奥みちのくのあらえびすどもが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加費藩の留守役で奥村藤兵衛という人に、おくみの兄の雁屋かりや信助から糸を付けた、知ってのとおり、信助は唐船からふねをやっているので、加賀藩の抜荷船ぬけにぶねとかかわりがある、それを
唐船からふねが帆ばしらをならべ、街には、舶載物はくさいものを売る店舗みせや、武具をひさぐ商人あきんどが軒をならべ、裏町には、京やさかいから移住して来た工匠たくみたちが、糸を染め、やじりを鍛え、陶器すえものを焼き
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)