命冥加いのちみょうが)” の例文
命冥加いのちみょうがな奴ではある。かえすがえす、ありがたいと思え。したが、このことを以て、楠木党の甘さと見たら大間違いだぞ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏の異名いみょうを受けて命冥加いのちみょうがにありつき、こうして四十の坂を越しても、ともかく、ぴんぴんとして今日が送れるというのは
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もし犠牲いけにえを捧げざれば、お通はもとより汝もあまりきことはなかるべきなり、忘れてもとりもつべし。それまで命を預け置かむ、命冥加いのちみょうが老耆おいぼれめが。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四、五間向うに、数羽のひなとともにたわむれている雷鳥、横合よこあいから不意に案内者が石を投じて、追躡ついじょうしたが、命冥加いのちみょうがの彼らは、遂にあちこちの岩蔭にまぎれてしまう。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
命冥加いのちみょうがな大工め。戻れ。又、機があれば、深雪にも逢えよう。深雪は、お前に、惚れたと申しておるぞ。その内、女から押しかけて参る程に、楽しみにして待っておれ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「他人の懐中物を抜いて走るとは、女ながらも捨ておき難き奴。なれど、見れば将来さきのある若い身空じゃ。命だけは助けて取らせるわ。これにりて以後気をつけい——命冥加いのちみょうがな奴め。行けっ。」
急ぐ、だから首だけは預けて置く。命冥加いのちみょうがと思うがいい
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「生きていたのか平次、命冥加いのちみょうがな奴だ」
「ごわせん。だが命冥加いのちみょうがな野郎でごわすな。おい若造、お桟敷さじきの方へ向って、三拝九拝して引ッ込め」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、お言いなさる通り、この年して、ともかくもこうして、命冥加いのちみょうがにありついているのは、何かわっしのために、代って罪ほろぼしをしてくれた徳人があるに相違ねえと思いますよ
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「残念だ。津軽め、命冥加いのちみょうがな」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
命冥加いのちみょうがな奴めが」と、捕えておいた河和田かわだの平次郎の側へ来て、懇々こんこんと、説諭を加え
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命冥加いのちみょうがな野郎だ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)