取除とりのけ)” の例文
歳越としこしの日などはいづれの家にてもことさらに雪をほりまどのあかりをとり、ほりたる雪も年越としこしの事しげきにまぎれて取除とりのけをはらず、掘揚ほりあげ屋上やねにひとしき雪道歩行あゆむにたよりあしき所もあり。
当路とうろの役人ほど馬鹿な事を考える人間はない。東京なる都市の体裁、日本なる国家の体面に関するものを挙げたなら貧民窟の取払いよりも先ず市中諸処に立つ銅像の取除とりのけを急ぐが至当であろう。
訪問はうもんはするひまたなかつた。たゞ坂井さかゐだけ取除とりのけであつた。折々をり/\ようもないのに此方こつちからわざ/\出掛でかけてつて、ときつぶしてことさへあつた。そのくせ坂井さかゐなかもつと社交的しやかうてきひとであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助は一般の社交をきらっていた。やむを得なければ会合の席などへ顔を出す男でなかった。個人としての朋友ともだちも多くは求めなかった。訪問はする暇をたなかった。ただ坂井だけは取除とりのけであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我越後には小正月の(小正月とは正月十五日以下をいふ)はじめ鳥追櫓とりおひやぐらとて去年きよねんより取除とりのけおきたる山なす雪の上に、雪を以て高さ八九尺あるひは一丈余にも、高さにおうじてすゑひろく雪にてやぐら築立つきたて
我越後には小正月の(小正月とは正月十五日以下をいふ)はじめ鳥追櫓とりおひやぐらとて去年きよねんより取除とりのけおきたる山なす雪の上に、雪を以て高さ八九尺あるひは一丈余にも、高さにおうじてすゑひろく雪にてやぐら築立つきたて