取換とりかわ)” の例文
藤ちゃんはずうっと行きたいという念があるので、おふくろさんも遣りたいと云うので、詰り極って、今日大津の銚子屋で結納を取換とりかわ
もっとも、親しげに言葉の取換とりかわされる様子を見たというまでで、以前家に置いてあった書生が彼女の部屋へ出入ではいりしたからと言って
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
結納ゆいのう取換とりかわされた。婚礼の当日に、五百いおは比良野の家に往って新婦を待ち受けることになった。貞固と五百とが窓のもとに対坐していると、新婦のかごは門内にき入れられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
岩下いわした重野しげのの両人、それから幕府の外国方がいこくがたから鵜飼弥市うかいやいち監察方かんさつがたから斎藤金吾さいとうきんごう人が立会い、いよ/\書面を取換とりかわして事のすっかり収まったのが、文久三年の十一月の朔日ついたちか二日頃であった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
結納の取換とりかわせがすんで、目録が座敷の床の間にうやうやしく飾られるまでは、お島は天性もちまえの反抗心から、はたいつけようとしているようなこの縁談について、結婚を目の前に控えている多くの女のように
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
寝ながら、不動の姿勢を取っているような妹の側で、時々お新と落合って、ありふれた言葉を取換とりかわすというだけでも、山本さんには嬉しかった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
西は少壮としわかな官吏であった。この人は、未だ大学へ入らない前から、三吉と往来して、中村という友達などと共に若々しい思想かんがえ取換とりかわした間柄である。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
目出度めでたい、目出度、という挨拶は其処そこにも此処ここにも取換とりかわされた。田舎いなかの方から引返して来た三吉は、この人達と一緒に、料理屋を指して出掛けた。日暮に近かった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こんな言葉を取換とりかわした後、正太は二三の男の浴客に混って、湯船の中に身を浸した。彼は妻だけこの伊東に残して置いて復た国の方へ引返さなければ成らない人で有った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
人々は互に新年の挨拶を取換とりかわした。屠手の群はいずれも白い被服うわっぱりを着け、素足に冷飯ひやめし草履という寒そうな風体ふうていで、それぞれ支度を始める。庭の隅にかがんで鋭い出刃包丁でばぼうちょうぐのもある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)