)” の例文
凶行の現場から老人の室まで恐ろしく鮮明はっきりした靴跡をけて、そのままちゃんと老人の室に置かれてあったことなども老人は夢にも知らなかった。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やっと、はじめて雪の上に、こぼこぼ下駄のあとのいたのが見えたっけ。風は出たし……歩行あるき悩んだろう。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
露地にいた足駄の跡を避けて、小僧に案内させた藤吉は子分二人を引具して家について裏口うらへ廻った。
黄金わうごんあとけぬ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
おやここに足跡があるよ。これは女の足跡だし、こいつは二人の男の足だ。規則正しく二つずつ、同じ間隔にいている。解っているよ、駕籠きの足さ。トヤ駕籠を
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御覧のとおり右手から蔵まであんな足形をけやした。
窓から舞い込んだ白い蛾が、灯火の射さない暗い床へ、クッキリと斑点をけていた。と、それがひらひらと舞い、宙で突然静止した。それは不思議でも何んでもなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
幸い手当が速かったので、腕へ歯形がいただけで、生命いのちには何の別状もなかった。ところが何と奇怪なことには、その翌晩にも口笛が聞こえ、同じ鼬が現われたではないか。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
窓から投げ込まれる春の陽に、それらのものが艶々と光り、また陰影かげけている。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蜘蛛の白い体に、無数に附着いてる斑点まだらは、五味左衛門のはらわたによってけられた血の痕であり、その後、左門によって、幾人かの人間が斬られ、その血が飛び散って出来た斑点でもあった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)