一行三人いずれも白い帷子かたびらを着て、おまけに背中には「南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう」の七字を躍らすなど、われながらあやしい装立ちだった。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
あのう、今しがたわしが夢にの、美しい女の人がござっての、回向えこうを頼むと言わしった故にの、……くわしい事は明日話そう。南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このとき、太鼓たいこをたたいて、一人ひとりあわれなじいさんの乞食こじきが、「南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう。」といって、うちまえって、あわれみをうたのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、鈴ヶ森へく罪人ならば南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう、また小塚原へ往く罪人ならば牢内の者が異口同音いくどうおん南無阿弥陀仏なむあみだぶつとなえて見送ったそうでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
士気を鼓舞すべく……また、南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょうの法力を借りて、この穴埋めの御難を乗りきるべく——。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私の家では代々の法華宗ほっけしゅうで、ことにも私の代になりましてから、深く日蓮にちれん様に帰依きえつかまつって、朝夕南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょうのお題目を怠らず、娘にもそのように仕込んでありますので
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ある日もアンポンタンはおまっちゃんと四ツ角で、その大人の、目覚めざましい狂奔きょうほんを見物していた。すると、帝釈様たいしゃくさまの剣に錦地にしきじ南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょうのぼりをたてた出車だしの上から声をかけたものがある。