半開はんびらき)” の例文
車は通らず、雨傘も威勢よくポンと轆轤ろくろを開いたのでは、羽目へ当って幅ったいので、湯の帰りにも半開はんびらき、春雨さばきの玉川ざし
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
スリッパを穿いたまま椅子の上に乗って、両膝を抱えるとクルリと南側を向いて、頭の中を整理するように眼を半開はんびらきにして窓の光りを透かしながら、ホッカリと青い煙を吐いた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こちらの窓も半開はんびらきになっていたので、顔と顔とが、何の障害物もなく向き合った。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
急いで流せば、こんな静かなところだからそれと音をさとられるので、排水弁はいすいべん半開はんびらきとし、ソロソロと園長の溶けこんだタンクの内容液を流し出したんです。しかしそれは一つの大失敗を残しました。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
明けて入るのを、小間使こまづかいが、あれといって、手を突く間もなく、一人が背後うしろからぴッたり閉めた。雨戸は半開はんびらきのまま、朝がけのいくさ狼狽うろたえたような形。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちやうどいまあめれたんだけれど、じやかさ半開はんびらきにして、うつくしいかほをかくしてつてる。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御堂みどう横からはすの池へ廻る広場ひろっぱ大銀杏おおいちょうの根方にむしろを敷いて、すととん、すととん、と太鼓をたたいて、猿を踊らしていた小僧を、御寮人お珊の方、扇子を半開はんびらきか何かで、こう反身で見ると
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薬のにおいしおれ返って医学士に目礼したが、一体八字ひげのある近眼鏡を懸けた外科の助手に毎日世話になるのであったから、愛吉は猶予ためらわず、ひょこひょこと進むと、戸が半開はんびらきになっていたので
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)