半開はんびら)” の例文
秀夫は婢にいて狭い廊下をちょと往くと、行詰ゆきづまりの左側に引立てになったふすま半開はんびらきになったへやがあった。婢は秀夫をその中へ案内した。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
物馴れた敏捷な聞手は早くも気勢を洞察して、半開はんびらきにした爺さんの扇子がその鼻先へと差出されぬうちにばらばら逃げてしまう。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして爪先つまさきでぐるっとまわって、ふりむくと、半開はんびらきのドアあいだから、こちらを見ている祖父そふの顔が見えた。祖父に笑われてるようながした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そのわかい方は、納戸なんど破障子やぶれしょうじ半開はんびらきにして、ねえさんかぶりの横顔を見た時、かいな白くおさを投げた。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
戸は半開はんびらきになっていて、なかから音楽が、いかにもやさしく、いかにもあまくうつくしく、ほれぼれと引きこまれるようなにきこえていました。これこそまったく魔法まほうのようなわざでした。
いうもおそし、一同はわれ遅れじと梯子段をけ下りて店先まで走り出ると、差翳さしかざ半開はんびらきの扇子せんすに夕日をよけつつしずかに船宿の店障子へと歩み寄る一人のさむらい
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
遁腰にげごしに、ひらき半開はんびらきにおさへて、廊下らうかかしながら、聞定きゝさだめて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)