動揺どよめき)” の例文
旧字:動搖
といってる時、公園の入口の方でワアッというただならぬ動揺どよめきが起ったと思う間もなく、夥しい人波がドッと池の方へ押返されて来た。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一人やなんぞ、気にもしないで、父子おやこは澄まして、ひとの我に対する表敬の動揺どよめきを待って、傲然ごうぜんとしていた。
が、階段を上るとき、彼女の心にふとある動揺どよめきが起つた。『まさか』と、彼女は幾度も打ち消した。が、打ち消さうとすればするほど、その動揺は大きくなつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
耳を澄ますと谷の中から、鎧のひしめきや人の声や、右往左往に走り廻わる武者草鞋むしゃわらじの音などが一緒になって一つの鈍い動揺どよめきが、聞こえて来るようにも思われる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
近い会場の浮立った動揺どよめきが、ここへもあわただしい賑かしさを漂わしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
が、階段を上るとき、彼女の心にふとある動揺どよめきが起った。『まさか』と、彼女は幾度も打ち消した。が、打ち消そうとすればするほど、その動揺どよめきは大きくなった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そうしてその谷を取り巻いている山々の裾や中腹からも同じように鎧のひしめきや号令をかける人の声や、走り廻わる草鞋わらじの音などが鈍い一つの動揺どよめきとなって聞こえて来るように思われる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
戸の外のものの気勢けはい動揺どよめきを造るがごとく、ぐらぐらと家がゆらめいた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
動揺どよめき渡る見物は、大河の水をいたよう、見渡す限り列のある間、——一尺ごとに百目蝋燭ひゃくめろうそく、裸火をあおらし立てた、黒塗に台附の柵の堤を築いて、両方へ押分けたれば、練もののみが静まり返って
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そとのものゝ気勢けはひ動揺どよめきつくるがごとく、ぐら/\といへゆらめいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)