剣槍けんそう)” の例文
旧字:劍槍
幼少の時、剣槍けんそう男谷おたにの道場へ、後に九段の斎藤弥九郎の練兵館にみがき、学問はいう迄もなく、孜々ししと毎日三田の塾まで通っている。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従来の和歌を以て日本文学の基礎とし、城壁とさんとするは、弓矢剣槍けんそうを以て戦はんとすると同じ事にて、明治時代に行はるべき事にては無之候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
剣槍けんそうに一流を究め、忍術に妙を得て、その上、力量三十人に敵し、日に四十里を歩み、昼夜眠らずしてむことなく、それに奇妙なのは盗賊ながら日本を週国して、孝子孝女を探り
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれど首将みずから剣槍けんそうの中を駈けあるき、歩兵や騎兵を叱咤しったし廻る戦闘ぶりに変りはなく、武敏の手にある一そうもすでに血ぬられて
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従来の和歌をもって日本文学の基礎とし城壁となさんとするは弓矢剣槍けんそうをもって戦わんとすると同じことにて明治時代に行わるべきことにては無之候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
従って、尊氏のいた所は、せつなに敵味方入りみだるる剣槍けんそうの場と化し、尊氏が用いていた床几がすッ飛んでいるだけで、尊氏のすがたは見えない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間もなく宵の城門を、五百余りの精兵が、元日の夜というのに、剣槍けんそう閃々せんせんと駈けだしてゆく。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまにものものしくおどり込んできた原士と天堂ら三人組は竹屋卿の前後をグルリと取巻いて、目指すつづらとともに、松兵衛、新吉の二人をも剣槍けんそうの中にくるんでしまった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このへんを往還おうかんするので、すさびた軒の人々は、剣槍けんそうを見ても、驚くなどのふうはなく、かえって、よいお花客とくいとして、蠅のように、酒売りの男どもや、籠を頭にのせたひさなどが
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣槍けんそうの猛練習では、いつも体のどこかにあざやこぶをこしらえていたり——というような日常を半面に持ち——つねにそれを激励されていたような時代の風が、時にかれを暴れンぼにしたり
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ見るほどの暗い朝霧の中いちめんに、濛々もうもうと立ちけぶっている物の具きびしい騎馬剣槍けんそうを見るや、長門守はまた急いで邸内に引っ返し、よろいびつくつがえして、具足を着こみ、打物とって
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)