こく)” の例文
五十男の一こくな松五郎は、本當に鋏位は新助に突つ立て兼ねません。佐々村佐次郎、それを押へるのが本當に精一杯でした。
「しかも曲っていらあ」「少し猫背ねこぜだね。猫背の鼻は、ちと奇抜きばつ過ぎる」と面白そうに笑う。「おっとこくする顔だ」と主人はなお口惜くやしそうである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上子の子のこく、臼をけば鼠種尽きるというも実は本末顛倒で、鼠が殺し尽されて今年の収穫は早この通りと、臼をつく多忙を示し祝う意に出たと考う。
何にしろ与一の仕方が少し突飛とっぴだったから、それしもとしてかみこくする与一を撃てということになった。与一の弟の与二は大将として淀の城を攻めさせられた。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それはうるう二月の一日であったが、この日宮家には蔵王堂の御座ぎょざに、赤地の錦の鎧直垂よろいひたたれに、こくばかりの緋縅ひおどしの鎧——あさひの御鎧おんよろいをお召しになり、竜頭たつがしら御兜おんかぶとをいただかれ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ハムレツト」の悲劇もゲエテによれば、思想家たるべきハムレツトが父のかたきを打たなければならぬ王子だつた悲劇である。これも亦或は両面のこくし合つた悲劇と言はれるであらう。
「気のどくだが智に溺るる智者の相だと。しかも上をこく凶相きょうそうが見えると」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
┌木 しょう 火 ┌水 こく 火
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)