ぐう)” の例文
鶴ほどに長い頸の中から、すいと出る二茎ふたくきに、十字と四方に囲う葉を境に、数珠じゅずく露のたま二穂ふたほずつぐうを作って咲いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
言語はもとより多端なり。さんと云ひ、がくと云ひ、ほうと云ひ、らんと云ふ。義の同うして字の異なるを用ふれば、即ち意を隠微のかんぐうするを得べし。大食おほぐらひを大松だいまつと云ひ差出者さしでもの左兵衛次さへゑじと云ふ。
肉の足らぬ細面ほそおもてに予期のじょうみなぎらして、重きに過ぐる唇の、ぐうかを疑がいつつも、手答てごたえのあれかしと念ずる様子である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
星の世はき落されて、大空の皮を奇麗にぎ取った白日の、隠すなかれと立ちのぼる窓のうちに、四人の小宇宙はぐうを作って、ここぞと互にれ違った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)