倚子いす)” の例文
不図応接室の戸をたゝく音がした。急に二人は口をつぐんだ。た叩く。『お入り』と声をかけて、校長は倚子いすを離れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
大祝賀會だいしゆくがくわいもようすとのことその仕度したく帆木綿ほもめんや、ほばしらふるいのや、倚子いすや、テーブルをかつして、大騷おほさわぎの最中さいちう
私がそのカフェの隅の倚子いすに坐ると、そこの女給四人すべてが、様様の着物を着て私のテエブルのまえに立ち並んだ。冬であった。私は、熱い酒を、と言った。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)
俊男としをは見るともなくおのづにははびこツたくさむらに眼を移して力なささうに頽然ぐつたり倚子いすもたれた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
掛けたか、掛けないように、お悦は、骨董店の倚子いすに腰をらして
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度校長は校長室の倚子いす倚凭よりかゝつて、文平を相手に話して居るところで、そこへ高等四年の生徒が揃つてあらはれた時は、直に一同の言はうとすることを看て取つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『いや、左様さういふ御心配に預りましては実に恐縮します。』と校長は倚子いすを離れて挨拶した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼は又、豊世を顧みて、「叔父さん達に倚子いすでも上げたら可かろう」と注意した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)