余沢よたく)” の例文
徳川時代には、小田原附近から関八州へかけてが、全国中でいちばん地租の安いところであったが、これは全くの早雲の余沢よたく
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、このすさまじい酒屋繁昌は、人心の何を語っているものか。ただ単に、これも泰平の余沢よたくといえる現象なのか。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとその下の地位にいる同僚達は順繰りに昇進してみんな余沢よたくうるおうというような事があるとすると、それはいくらかはこのドラゴイアンの話に似ている。
マルコポロから (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
る人ぐんをなすは勿論もちろん、事をはりてはこゝかしこにて喜酒よろこびざけえんをひらく。これみな 国君こくくん盛徳せいとく余沢よたくなり。他所にも左義長あれどもまづは小千谷をぢや盛大せいだいとす。
し此に一会社の興るあつて、正学一派のために校刻の業に従事し、毫も好事派を目中に置かなかつたら、崇文盛化そうぶんせいくわ余沢よたくまさわづかに社会に被及ひきふするであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
はては遠く九州筑紫つくしの名所も知らなくてはと思って、遠くまで船旅をする人が、こんどは富士や筑波の山々に行ってみたいと、ふかく心かれるのも、思えば、泰平の世の余沢よたくとして
たのもしい旧友はまたたのもしい旧友で、持つべきものは友達だといって、神尾の友達甲斐ある器量をほめて、おのおのその余沢よたくに恐悦している。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
る人ぐんをなすは勿論もちろん、事をはりてはこゝかしこにて喜酒よろこびざけえんをひらく。これみな 国君こくくん盛徳せいとく余沢よたくなり。他所にも左義長あれどもまづは小千谷をぢや盛大せいだいとす。
名古屋城の金のしゃちほこの光よりも、この郷土民が何百年の昔の歴史に信仰を置いて、何の功業もない我々を尊敬してくれる、これこそ、系図の余沢よたく、先祖の光である
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
余りでもって住職のために、唐紙へけえてやることは先生の御承諾になっているところだが、余沢よたくでない、本目的に向っての擂鉢すりばちの墨汁は、果して何に使用するものか——
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは参覲交代さんきんこうたいの大名の行列から来る余沢よたくの潤いであるとのことです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)