仲仕なかし)” の例文
僕はその仮定を確めるために、神戸の波止場はとば仲仕なかしを働きながら、不思議な秘密の楽しみをもっている人達の中を探しまわったのだ。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だが横浜には、そんな種類の荷役にやくになれた仲仕なかしは沢山あった。従って、水夫たちも安心して、その作業を手伝った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
新助は仲仕なかしを働き、丹造もまた物心つくといきなり父のく荷車の後押しをさせられたが、新助はある時何思ったか、丹造に、祖先の満右衛門のことを語ってきかせた。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
私のかお何処どこ幼顔おさながおて居ると云うそのうちには、私に乳をましてれた仲仕なかし内儀かみさんもあれば、又今度こんど兄の供をして中津から来て居る武八ぶはちと云うごく質朴な田舎男いなかおとこ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
五日前から喧嘩けんかしていた仲仕なかしの細君がまた飛び出して来た、そこで互に感じが悪いというので二人とも家へ引込んでしまったために、その翌朝フク子は蛸の足と共に浮き上っていた。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ちょうどいま、あるものは積荷つみにをし、あるものはいかりをおろそうとしていました。仲仕なかし商人しょうにんが、いそがしそうに走りまわっていました。そこらじゅうが、がやがやしていました。
もっと卑近な言葉で云うと、荷物の揚卸あげおろしに使われる仲仕なかしの親方をやっている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雑草園の饗宴のどよめきに気がついて、ふるまい酒にさわいでいる仲仕なかしや船員たちの間をかきわけて、ハルクのすがたをさがしもとめてもみた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)