仮親かりおや)” の例文
旧字:假親
「ところが、板倉屋は近頃お駒に夢中で、こんどこそは仮親かりおやを立て、引き祝いもさせて、家へ入れようというところまで話が進んだ」
文蔵は仮親かりおやになるからは、まことの親と余り違わぬ情誼じょうぎがありたいといって、渋江氏へ往く三カ月ばかり前に、五百を我家わがいえに引き取った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
部下の御家人で那見なみ市右衛門という老人を仮親かりおやに立て、名を園絵と改めさせて、牛込築土うしごめつくどまんに近い神尾方へ送り込んだのだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
蛇つかいの足を洗って相当の仮親かりおやをこしらえて、仁科林之助の御新造ごしんぞさまと呼ばせてみせると、男は重い口で自分に誓った。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ええ、お松の仮親かりおやのわたくしでございます、さっきから待っておりました」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
千之丞はかねて千倉屋の娘に懸想けそうしていて、町人とはいえ相当の家柄の娘であるから、仮親かりおやを作って自分の嫁に貰いたいというようなことを人伝ひとづてに申し込んで来たが
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで下野の宗家を仮親かりおやにして、大田原頼母たのも家来用人ようにん八十石渋江官左衛門かんざえもん次男という名義で引き取った。専之助名は允成ただしげあざな子礼しれい定所ていしょと号し、おる所のしつ容安ようあんといった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いずれは仮親かりおやでも立てて、二人を一緒にしてやり度い——と、御両親の間では話も無いでは無かったが、親御の方ではそんな事をうっかり口にするわけにも行かず、若い者はまた、取のぼせて
「それは何よりのこと。この縁談の仮親かりおやはどなたでござりまするな」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、一旦綺麗に足を洗って置いて、それから担当の仮親かりおやこしらえりゃあ又どうにか故事こじつけられるというものだ。又それが面倒だとすれば、今も言う通りどこへか囲っておく。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その時貞白は浜照が身受みうけの相談相手となり、その仮親かりおやとなることをさえ諾したのである。当時兄の措置そちを喜ばなかった五百が、平生青眼せいがんを以て貞白を見なかったことは、想像するにあまりがある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)