什物じゅうもつ)” の例文
寺の什物じゅうもついっさいを船にのせて運ぶ途中、あやまって半鐘を淵の底に沈めたので、そのところを鐘ヶ淵と呼ぶというのである。
鐘ヶ淵 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
黒谷くろだにとか金閣寺きんかくじとかいう所へ行くと、案内の小僧さんが建築の各部分の什物じゅうもつの品々の来歴などを一々説明してくれる。
案内者 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
烏帽子えぼしもともに此の装束しょうぞくは、おりものの模範、美術の表品ひょうほん、源平時代の参考として、かつて博覧会にも飾られた、鎌倉殿が秘蔵の、いづれ什物じゅうもつであつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
神社仏寺とも古来所伝の什物じゅうもつ、衆庶寄付の諸器物、並びに祠堂金しどうきん等はこれまで自儘じままに処分し来たったが、これも一々教部省へ具状すべき筋のものであるか。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、本願寺側でも、その以前に、あらゆる什物じゅうもつ宝器ほうきを展列して、いちいち目録を添え、ちりを払い、らんきよめ、立つ鳥水を濁さず——のことばの通りきれいにして去っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この痩所帯やせじょたいに金屏風だけが光っている、これはお寺の什物じゅうもつの一つを貸してくれたもので、緑青ろくしょうの濃いので、青竹がすくすくと立っている間に寒椿かんつばきが咲いている、年代も相当に古びがついて
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
烏帽子もともにこの装束は、織ものの模範、美術の表品ひょうほん、源平時代の参考として、かつて博覧会にも飾られた、鎌倉殿が秘蔵の、いずれ什物じゅうもつであった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ずたずたになれるむしろの上に、襤褸切ぼろきれ藁屑わらくずわん、皿、鉢、口無き土瓶、ふた無きなべ、足の無きぜん、手の無き十能、一切の道具什物じゅうもつは皆塵塚ちりづかの産物なるが、点々散乱してその怪異いうべからず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこのか、什物じゅうもつ、」
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)