人態にんてい)” の例文
けれど、盗賊ならば、およそ人態にんていと所持品の多寡たかを一見して知るめいは持っているはずである。自分を害して、なんの所得があるか。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「夫子夫子と言ったとて、どれが一体汝のいう夫子やらおれわかる訳がないではないか」と突堅貪つっけんどんに答え、子路の人態にんていをじろりと眺めてから
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「なに、いい獲物を捕まえたと。そこらの柱へでも引ッくくっておけ。どうするのかは、あとでゆっくり人態にんていを見てからでいい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堀留の事件の前夜に、ここで木更津船の岩五郎から、苫船とまぶねを一そう借りた者があるはず。その人態にんてい、その他の事だった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「知らなくってどうするものじゃない。お前さんもしばらく見ないうちに、大層頼もしいご人態にんていになりましたねえ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだいくらかの疑惑を二人へもつらしく、その人態にんていなどを眼でぶるがごとく見直すのだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十数名の武者は、みな小具足こぐそくの旅姿だった。といってもあらましは、足軽程度の人態にんていにすぎない。争いあって、一碗ずつの酒を持ち、干魚か何かを取ってはムシャムシャ食う。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駒を止めてふりかえると、煙のような白いもやのうちから、一個の人間がだんだんその影を濃くあらわし、やがて輪廓だの色だの、年頃や人態にんていまで見えるほどに、距離を縮めて来た。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、検校はじめ、別当、勾当こうとう、座頭、ここにいるほとんどは盲人である。辞儀にこたえて席の一同も頭を下げたが、いかなる服装やら人態にんていやら一見で知る識別はその人たちにはない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門は、奥へ行って、ろうの壁に身を寄せ、そっと、客の人態にんていを、覗いてみた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法師武者の善性坊がそれへ直ると、藤吉郎は、黙って人態にんていをながめていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ぬ日はないが、あれなる男のような人態にんていは見たことがない
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「して其奴そいつは、武士か町人か、そして人態にんていは?」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『どのような人態にんていでございましたか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)