亡骸むくろ)” の例文
とたんに、彼の上へ、棍棒こんぼう鈎棒かぎぼう鳶口とびぐち刺叉さすまた、あらゆる得物えものの乱打が降った。そして、しし亡骸むくろでもかつぐように、部落の内の籾干場もみほしばへかつぎ入れ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なまぐさい血汐に眼鼻めはなたれて、思わず押えた手をゆるめると、敵の亡骸むくろはがっくりと倒れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてそしてあの墓の下に、ひたいを撃たれて糜爛びらんしたジーナと、スパセニアの亡骸むくろが私をうらんで、横たわっているかと思うと、見えも恥もなく、総毛だってガタガタと私は、震え出しました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
雷電峠と反対の湾の一角から長く突き出た造りぞこねの防波堤は大蛇だいじゃ亡骸むくろのようなまっ黒い姿を遠く海の面に横たえて、夜目にも白く見える波濤はとうきばが、小休おやみもなくその胴腹にいかかっている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
罪ある父の首をさらされた場所を去らずに、その子は恋の亡骸むくろさらしたのであった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おお、あの声は、死者の縁類か。無残な亡骸むくろを見ては、その怒りは無理もない」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)