二時やつ)” の例文
二時やつ時分になって九兵衛が帳場で茶を飲んでいると、蠅の影がまた見えた。蠅は帳場格子の上から机の上におりた。
蠅供養 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二時やつさがりに松葉まつばこぼれて、ゆめめて蜻蛉とんぼはねかゞやとき心太ところてんおきなこゑは、いち名劍めいけんひさぐにて、打水うちみづ胡蝶てふ/\おどろく。行水ぎやうずゐはな夕顏ゆふがほ納涼臺すゞみだい縁臺えんだい月見草つきみさう
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二時やつ過ぎの門口かどぐちに一本ある柿の木を染めていた。一人の老人が庭前にわさきむしろの上で縄をうていた。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは延宝七年の春の二時やつすぎであった。前は一望さえぎる物もない藍碧らんぺきの海で、其の海の彼方かなたから寄せて来る波は、どんと大きな音をして堰堤に衝突とともに、雪のような飛沫をあげていた。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)