丸裸まるはだか)” の例文
その一本は殆んどかつて、うへの方には丸裸まるはだか骨許ほねばかり残つた所に、夕方ゆふがたになると烏が沢山集まつて鳴いてゐた。隣にはわか画家ゑかきんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鈴蘭、おめかしの好なをんな、白いのどを見せて歩く蓮葉者はすはもの故意わざとらしいあどけなさ、丸裸まるはだか罔象女みづはのめ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
これは粗末ながら小屋を建てて住んではいたが、三人ともに丸裸まるはだかであったという。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そこがあの本居先生と違うところさ。本居先生の方には男女おとこおんなの恋とかさ、物のあわれとかいうことが深く説いてある。そこへ行くと、平田先生はもっと露骨だ。考えることが丸裸まるはだかだ——いきなり、生め、ふやせだ。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見るんじゃ。断崖は何十丈と上の方にものびている。じゃが、もうそこには一本の木も草もない。丸裸まるはだかの岩がただ真青な天に食い入っているだけじゃ。白い雲が一ひらぐらいは浮いているかも知れんがの。どうじゃ、これもいい景色じゃろう。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
窓に対する壁は漆喰しっくいも塗らぬ丸裸まるはだかの石で隣りの室とは世界滅却せかいめっきゃくの日に至るまで動かぬ仕切しきりが設けられている。ただその真中まんなかの六畳ばかりの場所はえぬ色のタペストリでおおわれている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところへ野だがすでに紀伊の国を済まして、かっぽれを済まして、たな達磨だるまさんを済して丸裸まるはだか越中褌えっちゅうふんどし一つになって、棕梠箒しゅろぼうきを小脇にい込んで、日清談判破裂はれつして……と座敷中練りあるき出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)