下掻したがい)” の例文
しかしまばゆかったろう、下掻したがいを引いてをずらした、かべ中央なかばに柱がもと、肩にびた日をけて、朝顔はらりと咲きかわりぬ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空にふらふらとなり、しなしなとして、按摩の手のうちに糸の乱るるがごとくもつれて、えんなまめかしい上掻うわがい下掻したがい、ただ卍巴まんじともえに降る雪の中をさかし歩行あるく風情になる。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その野分のわきに、衣紋えもんが崩れて、つまが乱れた。旦那の頭は下掻したがいの褄を裂いたていに、紅入友染べにいりゆうぜんの、膝の長襦袢ながじゅばんにのめずって、靴足袋をぬいと二ツ、仕切を空へ突出したと思え。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぬしになって隠れていそうな気がする処へ、蛇瓶の話を昨日きのう聞いて、まざまざと爪立足つまだちあしで、黒焼屋の前を通ってからというものは、うっかりすると、新造しんぞも年増も、何か下掻したがいつまあたりに
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)