一一いちいち)” の例文
どの格納庫にも幾つかの飛行機が納められて居て一一いちいち様式がちがつて居る。墜落して壊れたのもある。不備な所を修繕して居るのもある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
らちもない対話をしているのに、一一いちいちことばに応じて、一一の表情筋の顫動せんどうが現れる。Naifナイイフ な小曲に sensibleサンシイブル な伴奏がある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
学校時代の教師の教にさえ内心では十分に服せぬ娘が、妻となりましたからといって夫の言葉を一一いちいち御無理御尤ごもっともと和するほどに今の教育は女を愚に致してはないはずです。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
夜は針箱の底深くおさめてまくら近くおきながら幾度いくたびか又あけて見てようやねむる事、何の為とはわたくしも知らず、殊更其日叔父おじ非道ひどう勿体もったいなき悪口ばかり、是もわたくしゆえ思わぬ不快を耳に入れ玉うと一一いちいち胸先むなさきに痛く
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一心だのといふものが一一いちいち深く背景を成してゐるのであつた。
心理の縦断と横断 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
寝台ねだいタアブル、椅子の上へ掛けて沢山たくさんの古い舞台が並べられ、其れを明るい夕日がてらす。マドレエヌは一一いちいちうれしさうに眺めて追懐に耽つてゐる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此処ここは一番古い飛行練習場だけの格納庫も飛行機史上に逸し難い最初の面白い記録を持つて居る。滋野君はそれ等を語りなが一一いちいち飛行機の特色を説明してれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)